キュレーション媒体への出稿はまだリスクが多い?/CAのspotlightが医学的根拠の乏しい記事を掲載

キュレーションメディアのことは、おいおい書こうと思っていたのですが、
ちょうどソーシャル上でサイバーエージェントのキュレーションメディアspotlightが話題になっていたのでこの記事を書くことにしました。

キュレーションメディア DeNAとCAの状況

雨後の筍のごとく出てきたバイラルメディアは淘汰される時期を過ぎました。
今回の本題ではないですが、改めてDeNAとCAこの2社のキュレーションメディアについて触れておきます。

このブログでは、DeNAとCAの二社が市場をどうおさえるかになりつつあるといったことが書かれていました。

ameblo.jp

DeNAのキュレーションは大型買収を含めてキュレーションプラットフォーム「パレット」http://dena-palette.jp/ として展開しています。

まだまだ始まったばかりのものもあわせて10媒体あり、主立ったところでは以下3媒体でしょうか。
meryhttp://mery.jp/
iemohttp://iemo.jp/
FindTravelhttp://find-travel.jp/

DeNAの特徴は各カテゴリ特化型で、verticalキュレーションメディア。
meryは女性向けに特化して、ローラを起用したTVCFで勢いを伸ばしました、恐らくここが市場を取ります(もう取っていますかね)
DeNAの各メディアはSEOに非常に強いですね、何かを検索するとDeNAのメディアが上位に出てくることが多いです。特に旅行カテゴリでは他の名だたる旅行メディアを差し置いてFindTravelが上位にくることが増えています。そこから旅行予約などにつなげています。
記事内にECへのリンクが非常に多くあり(そこで売れているとは思えませんが)、またタイアップ広告の種類も数も多く、利益が出ている模様。


一方のCAのキュレーションはお得意の自社立ち上げ自社運用で、恐らくこの3つだけ。
spotlighthttp://spotlight-media.jp/
by.shttp://by-s.me/
gamyhttps://gamy.jp/

SEOはあまり強くなく、ソーシャルとAmebaからの流入に頼っている傾向です。DeNAのようなECはなく記事広告のみ、出稿数は少ない印象です。 

規模よりもカテゴリ特化しているメディアの方が出稿時のエンゲージメントは高くなるので出稿主は特徴あるメディアに出していきます。
後で触れますが、meryが猛烈に強い段階ではby.sに出稿するクライアントは多くは出てこないのではないかと予想されます。


キュレーションメディアの規模はGoogleAnalytics計測

なお、最初に紹介したブログにて、DeNAは5000万MAU、CAは4000万MAUとありましたが、両陣営共にGoogleAnalytics計測ということですので、正しくはMAUではありません。
1人のユーザーを接触するブラウザベースでカウントしているので、この規模のMAUではなくもっと少ないです。

例えば、1人のユーザーが、スマホSafariブラウザでサイトを見て、その後にFacebookネイティブ経由で見て、またTwitterアプリ経由で見て、PCのChromeブラウザで見てた場合、本当は重複なく1UUとなるのですが、GoogleAnalytics上は4UUとなります。

DeNAの決算資料の14ページ目にmeryだけ載っていました。

月間利用者数約2000万
http://v3.eir-parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=ir_material&sid=49088&code=2432&ln=ja&tlang=ja&tcat=ir_material&disp=simple&groupsid=19069

またCAの決算説明資料の27ページ目に2メディアの規模が載っていますが、spotlightが2337万MUB、by.sが1065万MUBとなっています。

http://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/OumS/gc4F/ECWR.pdf

時期の記載はありませんがおそらく2015年12月のものでしょうか。
さすがにIR説明会資料なので、両社「MAU」という表記ではなく「利用者数」と「MUB」として、GoogleAnalyticsの数値と補足を入れていますね。

ですので、各メディアそもそもそこまで大きくないです。技術的仕様で仕方がないのでしょうが、広告主側からするとGoogleAnalyticsの水増しした規模ではなく、重複カットしたMAUを正しく出してほしいと思うことでしょう。

なお、女性向けアプリの規模がappapeという分析ツールを使って記事化されていましたが、女性向けメディアのアプリではmeryが圧倒的で、CAのby.sはかなりの差を付けられているようです。

lab.appa.pe

先ほど書きましたが、利用者数がGoogleAnalyticsベースでも約1000万離れていて、アプリが圧倒的に差がついているこの状況ではby.sに出稿したいと思う出稿主は非常にレアだと想像されます。

※女性向けではantennaも強いですね、一時期よりも落ちてはきていますが規模ではない戦略を取っているので引き続き出稿は続きそうです。やはり何かに特徴を持つのは大事ですね。

キュレーションマガジン antenna[アンテナ]

 

 

キュレーションメディアの記事はだれが責任を持っているのか

キュレーションメディアについてはもう少し書きたいことがあるのですが長くなりすぎるので、一旦今回の本題に入ります。

最初に書いた「ソーシャル上で話題になっていた」というのはヨッピーが取り上げていたこのツイートに書かれている記事です。

 

この記事、サイバーエージェントはどういうチェックをしているのだろうかと本気で不思議に思いました。

next.spotlight-media.jp

※いつの間にか削除されていました、こういう時の対応ははやいですw

この記事の魚拓はこちらです。

megalodon.jp

 

想像するに、この記事を書いたこのライターphotoessay21さんが

spotlight-media.jp

このgooブログの内容をほぼ丸コピし、引用と銘打って載せているようです。

blog.goo.ne.jp


この量の引用が果たして編集に値するのかわかりませんが、
医学的根拠の責任はこの引用元のブログを書いた方にも、本を書いた船瀬さんにもあるでしょうが、この記事に関しては掲載したサイバーエージェント側にもありますね。


なお、医療に関しては同じサイバーエージェントグループのサイバーバズが医療Q&Aサイトを運用していますが、こちらに問い合わせたらどういう回答がいただけるのでしょうか。

doctors-me.com

 

医療に関する情報は研究によって常にアップデートがされていきますし、今までの通説が正しくないことも出てきたりします。医療に関する情報は人の健康・命にも影響することなので、非常に取り扱いが難しいものです。情報を提供する側は本当にそのことを考える必要があります。

そんな中、medleyというスタートアップ(CEOは東大医学部卒業、取締役もほぼ医者)は、医療情報は正しい根拠に基づいたものが重要と、記事を何重もチェックして初めて公開するようなフローを取っています。

医療ヘルスケア分野の課題を解決する | 株式会社メドレー

medley.life

時間と手間をかけてでも正しい情報を提供するというこういったメディアがある中、

とにかく何でも良いから話題にし、ソーシャルで拡散して、人が集まれば良いといったメディア運用をしているようであれば(たとえ、その結果規模が大きく、リーチが広いからといって)、出稿主としてはそこに出稿したくはないですよね。

今回の記事からは、何でも拡散すれば良いというサイバーエージェントspotlightの編集・運用方針が透けて見えてきました。

筍のように出てきたバイラルメディア時代、無断引用、盗用もありました。ノンクレジット問題もありました。

そういえばこれもサイバーエージェントでした。

netgeek.biz

spotlightはこれもありました。

www.itmedia.co.jp


話がそれますが、サイバーバズはノンクレジット問題のど真ん中にいましたね。

www.cyberagent.co.jp

Yahooニュースから切られた2メディアは今どうなっているのでしょうか。

japan.cnet.com


そういった問題を業界全体で解消していっている最中、今回のspotlightの記事は残念でなりませんでした。


  キュレーションメディアの今後は

そういう意味では、出稿先としては(今のところなんとも言えないですが)、規模や記事の質という2点で、CAではなくDeNA側に軍配あがっているでしょうか。


また1月に大々的に発表し、ローンチしたバズフィードジャパンには期待していました。

japan.cnet.com

が、今のところそのレベルの低さに辟易しています。
これなどは、ひどすぎてもうなんとも…

www.buzzfeed.com

ただinstagramにあるカワイイ犬写真を載せて、ジョジョに出てくる効果音を載せているだけ。Facebook上の投稿では荒木飛呂彦さんをタグ付けして、リーチを拡げようというテクニックを使っていましたが、それもあざとくて。掲載当初は「関連はありません」という記載すらなかったですから。
これを社内ライターが書いているというレベルの低さ。


ヤフーや元朝日新聞の編集がきちんと編集・メディア展開し、SNSのクソまとめキュレーションメディアを駆逐してくれると思っていましたが、まだまだ、まだまだ時間がかかりそうです。こんな記事が続くようであればバズフィードジャパンの今後もお察しです。

まだ何か発生したら、どこのサイトでも同時多発的に似たような情報をコピペしてまとめるよう記事が多いですが、今後はそれからさらに踏み込んで、そのメディア独自の切り口で記事を編集していってほしいと心から願います。

たとえ[AD]や[PR]の表記があろうがなかろうが良いエディトリアル記事には価値があるので、メディアサイドには記事の質を少しでも高める努力をしてほしいです。そうなった時に初めてキュレーションメディアへの出稿に本当の価値が出てくるのでしょうね。

仕事をする上で大事な視点って何だろう・広告業界はズレているんだろうかという話

東京コピーライターズクラブの広告について怒りを感じられている、とあるコピーライターさん(どなたか存じ上げないのですが)のエントリー。はてブでも上位にあったし、ご存知の方も多いかと思われます。

copywriterseyes.hatenablog.jp


会社に入り仕事を始めた頃、「どこを向いて仕事をするのか」ということを上司から指摘されてたなーってことを思い出しました。


この東京コピーライターズクラブ(TCC)が解散すべきかどうかはわかりませんし、ここに書かれている

誰に、ほめられたいんですか?

「いいね!」と仲間うちに褒められるのもうれしいんでしょうけど、
本当は、誰よりも、一番厳しいあの人に褒められたい。
ですよね?

というコピーが良いとは私も思えないのですが。
これで奮起するようなコピーライターなんて、視点が低くって、狭い社会の中でいる人たちなのかもしれないですね、この方が書かれているように。
ただそれでも、まだまだ誰かにチェックされているような駆け出しのコピーライターが奮起するきっかけになるのであればそこには意味があるのかもと思っています。むしろそれを目的にした広告だったのではなと思いました。

 

話を戻すと、当時の上司に、
仕事には3つのフェーズがあって、
(1)上司を向いて仕事をするフェーズ
(2)顧客を向いて仕事をするフェーズ
(3)自分に向いて仕事をするフェーズ
という順にレベルが上がっていく、早く(1) を抜け出さないとダメだぞと言われたのでした。

(1)上司を向いて仕事をするフェーズ
仕事の成果が良いか悪いかわからず、上司の顔色を伺いながら(上司の顔を伺うことで精度は最低限をクリアすると思います)、とにかく上司に注意されないことだけを目的に動いてしまうような時期。やらされ仕事時期。
※仕事のコントロールをしているのは完全に上司。
 
(2)顧客を向いて仕事をするフェーズ
上司がチェックすることもあるが、基本的には自分でコントロールができるようになり、顧客が満足するレベルのアウトプットを出せるようになる時期。上司の指示よりも、顧客からのリクエストを優先して仕事に向き合える時期。
※ただし仕事のコントロールをしているのは自分ではなく顧客。顧客から「いついつまでに」と無茶な依頼が来ても、自分の予定を無理に調整したりしてなんとかせざるをえない。
 
(3)自分に向いて仕事をするフェーズ
顧客が満足する精度を自分で判断でき、上司の指示やチェックを仰ぐことなく、アウトプットし、顧客から評価され、どんどん成果を出していく時期。
※仕事のコントロールをしているのは上司でも顧客でもなく自分。スケジュールも精度も自分優先で動かせていけるような状況。
 

当時はそうかそうか、顧客のニーズを満たすものを当然のようにクリアして、早く自分のアウトプットに自身が持て仕事ができる(3)のレベルになろうと思ったものでした。

違っているかもしれませんが、このTCCのコピーは
(1)上司を向いて仕事をするフェーズ
の人たちに向けたコピーであったのではなかろうかということ。
決して、既に(2)顧客を向いて仕事をするフェーズ(3)自分に向いて仕事をするフェーズの人たちに向けたものではなかったんじゃないのかなということ。
※そうでなかったとしたら、このコピーは壊滅的にひどいですね。


このエントリーを書いたコピーライターさんは、おそらく(3)自分に向いて仕事をするフェーズにいらっしゃる方なので、

そして何より、仕事をする上では「自分の実感」こそが大事です。「いいコピーがかけ た。」「いい文章がかけた。」そういう実感こそが、何より大切なはずなのです。「自分がどうしても生み出したい」、「書きたい」そういう感情こそが原動力 のはずです。クリエイターと呼ばれる職種ならなおさら。

ということをと仰っているのですが、当然ですね。仕事はそうあるべきですから。

ただし広告主側の意見やビジネスとしての大前提を考慮するのであれば、
いや、違うでしょ?そんなオナニーな理由でコピー書いてるんですか?良いものが書けたと自己満足に浸りたいから日々の仕事をしているんですか?自分で自分を認めたいから、仕事するんですか?
と思ってしまう人も多いのではないかな?と思ったのです。特に広告主。


結局、自分が生み出したいもので自己満足に浸りたいなら、
広告主からの対価としての仕事としてではなく、ブログやtwitterで発表し続ければ良いじゃないか。いいねやRTをもらって社会から認められる感に浸れば良いじゃないか。と。

それよりもまずはユーザーが反応する(売れる・広告主から評価される)ところを目指すべきなんじゃないかと。

この方のエントリーを見て
「ディスられた!」と憤りを感じている人は閉鎖的で、内輪的で、排他的で、「社会のほうを見ていない」なオールドタイプ、
「そうだよ!さすがだよ!」と言っているのがニュータイプ
と思われている方も多くいそうですが、

私は
「ディスられた!」と憤りを感じている人は魂を重力に引かれて飛ぶことができないなんてことすら考えられないオールドタイプ、
「そうだよ!さすがだよ!」と言っている人も実は閉鎖的で、内輪的で、排他的で、「社会のほうを見ていない」旧態依然とした業界人、
「いやそこじゃないでしょ仕事って」と静かに仕事に向き合っている方がニュータイプ
なんじゃないかと、そう思ったのです。


この方の本題は「こういう内輪組織はいらないよ」「自分の実感が大事だよ」ということでした。
確かにそうでしょうし、こういう本質を突いた内部からの良い問題提起をされるからこそ、まずは広告業界がビジネスとして成り立っていることを前提に書いてもらうともっと良かったんじゃないかと。
「閉鎖的、内輪的、排他的だ」とご本人が仰られる広告業界が、
内輪ではなく、外に向けて、ビジネスとして成り立っていることを意識して働いている人がいるんだぞ、ということを多くの人に向けて(とりわけ広告主に)アピールでき、排他性や閉鎖性を解消するきっかけになれたんじゃないかと思ったのです。