イベント管理サービスからコミュニティプラットフォームにピボットしたPeatix(ピーティックス)の未来が楽しみ!

何かのセミナーだったかな、イベントの登録をするのがきっかけで知ったPeatix。コミュニティにピボットするとニュースになっていました。

thebridge.jp


このピボットに関してPeatixが作成した公式動画がこちらです。

www.youtube.com

 

みなさんはどう思われますか?私個人的には非常に期待をしているのです。その詳細は後ほど書くとして、

 

そもそもピボットとは

ピボットは、スタートアップで事業がうまくいかなくなった場合、軌道修正せざるを得なくなった場合の「事業転換」とネガティブな意味合いでよく使われています。

ですが、そもそも当初の事業仮説が外れることなんて、よくよくあるはず。
ターゲットや顧客が想定と違う、外部環境が変わった、プロダクトの品質が市場レベルに達していない(そもそもアウトですが)、解決しようとする課題そもそもが小さかった、利益が出るものではなかった、利益の出る仕組みをそもそも読み間違えていた。などなど。どんなに優秀な事業家でも世の中のすべてを読めるわけではないですので。

スタートアップの(ネガティブな意味での)ピボットがいちいち話題になるのは、資金がないスタートアップは資金ショート即アウトなので成功するまで粘れない、だいたいが一事業展開なので変更すると目立ってしまうという理由でしょうか。一方、スタートアップでなければ、利益が出てなくても粘ることができる、事業を変更すると負けたことになって担当役員が出世コース外されるため変更したいけど変更するにできない、、そのくらいの違いと思っておいて良いのではないかと考えています。

 

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では、このピボットを大きく10にカテゴライズしています。

01.ズームイン型
 いろいろあったいくつかの機能を一つにフォーカスして事業集中する
02.ズームアウト型
 それまでのメイン機能を一部として、より拡大したものに作り直す
03.顧客セグメント型
 ターゲット・顧客をそもそも変更する
04.顧客ニーズ型
 課題が実は大したことなかったり、だれも対価を払ってくれないような場合、そもそもの課題・ニーズを変更して攻めなおす
05.プラットフォーム型
 単一のアプリからプラットフォームに変更(もしくはプラットフォームから単一アプリに方向転換)
06.事業アーキテクチャー型
 薄利多売 ⇔ 厚利寡売・高付加価値の切り替え
07.価値獲得型
 どうやってマネタイズするか、売上をどう作っていくかを変更する
08.成長エンジン型
 成長させる時の3ブースト方法(クチコミ、顧客定着化、マーケティング投資)を切り替える
09.チャンネル型
 販売・流通チャネルを変更する
10.テクノロジー型
 活用する技術を変更する

もちろんピボット・事業転換するときは上記のひとつだけになるわけではなく、いくつかの組み合わせもあると思います。当初の仮説とは違うさまざまな変数がビジネスにはありますので、それらに合わせて最適化していく「生存競争の一手段」くらいで認識しておいた方が良いのかもしれません。

また、今回のPeatixのピボットが通常使われるピボットと少し違うのは、決して現状の事業がうまくいかなくなったからやむを得ず業態を変更するといったネガティブなものではなく、イベント・チケット管理事業は順調な段階でのコミュニティプラットフォームへの業態変更です。言うなれば、今後のさらなる成長を見据えたポジティブなピボットです。しかもチケット事業を残しつつ、本当に片足を置いたまま新たに事業展開するようなイメージです。

最近では、サイバーエージェント事業上の利益が大きく出ている段階で、「PC・スマホいろいろネット全般」から「スマートフォン」に絞ったスマホシフト」によって大幅に利益を伸ばした「絞込み」が成功したと言われていましたが、これも広義ではピボットと呼んで良いのかもしれませんね。

これが2014年10月に行われた年度決算発表後の記事

japan.cnet.com

15年10~12月期の決算発表後はストップ高

www.asahi.com

 


世に溢れているピボット事例
今世の中にあるネット関連ビジネスは、だーれも知らないような事業から始まっていることが多々あります。むしろ始めた事業でうまくいったところの方が少なかったりするでしょうか。ピボットして成功したのだから、ピボットする前のことを知っている人の方が少ないのですね。

例1.instagram
instagramはburbnという位置情報・ソーシャルチェックインサービスでした。それが写真共有サービスとなり、その後Facebookに買収されました。数年後にはFacebookを抜く規模のコミュニティになるだろうとFacebook側も予測していますね。

例2.twitter
twitterpodcastの検索サービスでしたが、世界を変えるリアルタイムサービスとして大成功をおさめました。そして今は先行き不安の時期を向かえ、創業者のジャック・ドーシーがCEOに返り咲き、幹部を切り、事業の建て直しを進めています。
切った人たちはinstgramに行ったりしてますがw

例3.AirBnB
AirBnBは空いた部屋を貸してあげて、朝食をサービスする事業でした。その名残りで「Bed&Breakfast」が今も社名についています。今ではArirBnBは部屋だけではなくあらゆるスペースを借りることのできるソーシャルシェアリングサービスの代名詞的企業となりました。

Facebookをピボットというと怒られるかもしれませんが、創業当初はハーバードの学生限定のコミュニティ(同じ履修コースの人が分かる)でした。

 
有名な話ですが任天堂花札の会社でしたね。ソニーはもはや金融会社ですし、人材系だったmixiSNSを経てゲーム会社です。ソフトバンクはいろいろな事業を経て、今は通信会社ですらなく、もう投資事業会社の方が正しいのかもしれません。

 

Peatixがピボットした3つの理由(想定)
最初に書きましたが、私個人としては、これは切り口としては非常におもしろく、チャンスあるものだと思っています。その理由は以下の3つです。

理由1.チケット予約事業ではいずれ大きなコストが必要になる

理由2.facebookTwitterのコミュニティに隙はないのか?

理由3.日本だけを見ていない

理由1.チケット予約事業ではいずれ大きなコストが必要になる

thebrigeで原田氏がコメントしていたように、ここに収斂しているように思います。

チケットサービスはいくつか存在していますが、ビジネスとしてしっかりと成立させるには興行のような大きなイベントで利用されることが必要になります。ですが、そのためには現地に事業所を置き、営業等を行っていく必要も出て来ます。

そうなれば、売上の伸びと比例して、人件費も増えてしまう。せっかくのウェブサービスを運営しているのであれば、それはしたくありませんでした。コミュニ ティのプラットフォームとなり、機能の一つとしてチケットサービスを提供する。ビジネス的にはこちらのほうが可能性が大きいと考えました

例えばの話ですが、イベント管理PFをやっていたはずが、気づけは利益を作るためにイベント運営事業のようなものを始めていた。イベント運営にはコストがかかりすぎて、利益が減少している。しかし少ないながらも利益を出すためにはこのイベント運用事業のようなものを続けなければならない。あれ、気づけば身動きが取れなくなってて、資金がショートしそうだ。社内のみんなは頑張って働いてくれているが、だれも幸せそうな雰囲気はなく、むしろ負のオーラが漂っている。。
なんとなくスタートアップが陥ってしまうような状況なのかもしれません。そうならないようにこの段階で舵を切ったのは適切だとも言えるのではないでしょうか。

理由2.facebookTwitterのコミュニティに隙はないのか?
facebookは日本だけではなくもう世界で伸びが鈍化しています。いろいろな人とつながりすぎたためにfacebookの雰囲気が好きではない人たちもいます、そういう私もですが。。

だれでもかれでもつながっている場所では自分の好きなことを楽しめない、いろんな人・情報が混在しているFacebooktwitterで、イベントで出会った人とまたどんどんつながっていくのはどうなんだろう…みたいな感覚は真っ当なものだと思います。
そういう時に真に楽しめる感覚でPeatixのコミュニティを利用するという世界を作ることができれば、そのコミュニティの価値はFacebooktwitter以上になるのではないでしょうか。
もちろんこれをどう実現するのかが今後の事業のポイントで、経営陣の腕の見せ所でしょうね。


理由3.日本だけを見ていない

日本拠点のサービスでしたが、本社を既にNYに移転させており、海外展開も積極的です。シンガポールとマレーシアにも法人があります。結果、利用ユーザーは日本だけではなく、アメリカ、シンガポール、マレーシアなど27カ国に及んでいるのはPeatixのビジネスにおいて大きな強みです。現状の流通総額は約60億円で、このうち海外比率は約25%(15億円ほど)という驚きの数値。
既に日本国内だけを見てビジネス展開をしていないというのが、今回のコミュニティ化に振り切っていく大きなポイントだと思っています。こういう状態でチケット予約を展開していくと、「1.チケット予約事業では大きなイベント運用が必要になってくる」であるように、大きなデメリットになってしまいます。海外でのイベント運用っていくらかかるのでしょうか。例えば日本でうまく効率化できたとしても、それぞれの現地でゼロベースで運用事業をやっていく必要が出てしまい、世界中・さまざまな場所で非常に多くの運用コストまた人的コストがかかってくるはずです。
またアジアを含めた海外のコミュニティ展開に関しては、日本国内にいてFacebooktwitterやLINEを使っている我々とは違う視点を持っているはずです。「2.facebookTwitterのコミュニティに隙はないのか?」とも連携するのですが、海外では新しいコミュニティが(チケット予約よりも)大きなチャンスがあったと判断している可能性があり、それはもう日本の会社ではなく、海外の状態を踏まえて最適な事業展開を始めているということ、と想像しています。


ピボットしたPeatixの今後

という意味で、今の事業をベースとしながらコストを圧縮させつつ、既にある海外への足がかりを大きく活かしていくという点で、今回のコミュニティへのピボットは芯の通った事業転換だと応援したくなります。


サービスのファンだからこそ、このピボットをやめてほしいという方もいるようですし、実際Twitterを見ると不安な感じが漂ってました。

同じように社内でも不安な声はあったでしょうが、ここまで大きなピボットを決断したCEOの原田卓氏ならびに経営陣はものすごく勇気がいったことでしょう(すみません、上からな感じで)。ですが、こうしたからにはなんとしてでも成功させる!と意気込んでもいるのではないでしょうか。こういう時のチームの雰囲気も第二の創業期だ!くらいに活気付いているのではないかと想像しております。


概念的でしかないのですが、よく言われる「何を選ぶかではなく、選んだ道をどう生きるか」。これを実践して明るい未来につなげていってほしいと願ってます!応援しています!!